1.概要
昔買い集めた真空管を何とか生かしてやりたいと思いつつ時はどんどん過ぎ去っていきます。殆どが半世紀前の無線機を自作していた時のものですが、今となっては活用できるものが殆ど無くなってしまいました・・・作っても懐古趣味的だし、最新の機械に比べると実用性からほど遠いものになってしまいます。ただ今だに真空管オーディオという世界が健在であることからその派生形として中波帯の高忠実度(HiFi)AM送信機を作ってみようと思いついたのであります。
これは最近思いついたものではなく、かなり以前から構想を練っていたものでこの分野ではかなりマニアックな真空管を使ってやってみようと夢見ていたものなんです。
手持ちでこれに使える真空管としては次のものがあります。6BN6 TVのFM検波器用に開発されたゲーテッドビーム管です。
6ME8 TVのカラー復調用に開発されたビーム偏向管でAMの変復調の用途に使える真空管です。
これらの真空管を使った変復調回路に関しては、ネット上にいろいろ出てますが、ま~これらを真似して作っても良いのですが、ここは半世紀前に勉強したことを思い出して基本的な所からすべて自分で設計してみました。
2.設計
6BN6を使ったAM送信機について検討してみます。
2.設計
6BN6を使ったAM送信機について検討してみます。
6BN6の定格を次に示します。
第一グリッド:信号入力でありリミッタとして働く電極
第二グリッド:ビーム(電子流)を加速させる電極
第三グリッド:求積(直交)電極
(注)ビームの約90%が第二グリッドに吸収されプレートに到達するのは約10%程度にすぎません
RF信号を第一グリッドに入力しプレートから増幅された信号を取り出します。この時、第三グリッドの電圧によって電子ビームの開閉作用が行えます・・・これがゲーテッドビーム管と呼ばれる所以です。
なお、この球をAM変調の用途に使うにはプレート電流の立ち上がりの部分・・・スイッチング動作ではなく第三電極の電圧変化に対してプレート電流がリニアに変化する領域を使います。
それでは設計のポイントを以下に示します。
プレート電圧と第二グリッド電圧は真空管のデーターシートに用いられている値・・・すなわち60Vとして設計してみます。
まず、RF信号を入力する第一グリッドの電圧変動に対するプレート電流の変化を6BN6の特性図から求めます。
ちょっと見にくいですが、第三グリッド電圧0Vで第一グリッド電圧がマイナス1Vの時プレート電流は約1.2mAと読み取れます。そしてこの時の電圧変化に対する電流変化はΔIp/ΔVg1=0.6mA/1V=0.6mmho(ミリモー)であることが分かります。すなわち、第一グリッド電圧が±1V振れた時プレート電流は±0.6mA振れることが分かります。プレートの負荷が33kΩの時±20Vの振幅が得られることが分かります。
次に、変調するAF信号を入力する第三グリッドの電圧変動に対するプレート電流の変化(変調感度)を6BN6の特性図から求めます。第一グリッド電圧がマイナス1Vの時、第三グリッド電圧が3Vの変化でプレート電流は1mA変化することが分かります。
すなわち変調感度はΔIp/ΔVg3=1mA/3V=0.3mmho(ミリモー)であることが分かります。なお、この電流変化のリニアリティの良い領域は±0.5V以下であることが特性図から分かります。
6BN6のSpiceモデル・・・いい加減なモデルです(笑)。
AFの変調信号が無い状態でRF信号を次のような条件で入力して見ます。
(1)A級増幅器としてほぼフルスィングの信号を入力した時の出力信号はどの程度か?
・・・具体的にはVlimのバイアスがー1Vで入力信号レベルの振幅が1Vの場合
(2)B級増幅器としてほぼフルスイングの信号を入力した時の出力信号はどの程度か?
・・・具体的にはVlimのバイアスがー3Vで入力信号レベルの振幅が3Vの場合
これらをシミュレーターを動かして調べてみました。
(1)の場合
数学モデルを次に示します。
シミュレーション結果を次に示します。これを周波数軸で見てみると出力に21.2Vopの電圧が出力されることが分かります。これを電力に換算してみると約7mWであることが分かります。これを周波数軸で見てみると出力に27.5Vopの電圧が出力されることが分かります。これを電力に換算してみると約23mWであることが分かります。B級増幅器だとかなりのスプリアスがでるので、A級またはAB級増幅器で最大出力(理論的限界値)が10mW程度が妥当な線と思われます。
つぎにA級増幅器でRF信号にAF信号で変調を掛けるとどうなるかを見てみます。
RF信号入力1Vop(=0.7Vrms)、AF信号入力0.1Vop(=0.07Vrms)変調周波数10kHzの条件でシミュレーターを動かしてみました。
数学モデルを次に示します。
シミュレーション結果を次に示します。
教科書に出ているAM変調波形とは似ても似つかぬ形ですが、これを周波数軸で見てみると10kHzのサイドバンドが確認できるので正しく変調が掛かっていることが分かりますし、その2倍波は39dB低い(1/90)のでほぼ正確に変調が掛かっていると言えます。
以上のことからRF信号として1Vop程度、AF信号として0.1Vop程度で動かせば6BN6単球でAM変調の送信機が出来るものと思われます。
3.出力回路
出力の33kΩをダミーロードアンテナ(疑似負荷空中線)として使っても十分実用性があると思われますし、放出される電波の電界強度は微弱なので無線局の免許は不要と思われます・・・なお、この送信機は新規に放送局に割り当てが無い中波帯を使い超近距離の放送(家庭内の音楽のストリーミング放送なんかの用途・・・)に使うと便利だと思います。
更に拡張版として、出力にリンク結合のインピーダンス変換回路を付けてローインピーダンス出力にしておけばいろいろと応用が利くと思います・・・例えば、AMの低電力変調としてこれを使いリニアアンプで出力を増強するとか・・・(笑)。
それでこの用途には昔使われていた並四コイルが適当かと思います。
このコイルを使えば、次のとおりインピーダンス変換が出来ます。Zout=33kΩ/((105/5)X(105/5))=75Ω
ローインピーダンス出力が得られるので、ちょっとしたワイヤーアンテナ(ロングワイヤなど)を繋げば飛躍的に距離が延びると思われます(笑笑)。
4.まとめ
真空管6BN6を使ったHiFi AM送信機の設計について纏めてみました。この後実機を使って設計の検証をしてみたいと思います・・・製作編に続く・・・














































