Jul 19, 2020

6FQ7 Audio Power Amplifier #1 (6FQ7オーディオパワーアンプ設計編)

1.概要
12BH7A ステレオ・オーディオ・パワーアンプが所期の目的を達成し、期待していたとおりの性能を発揮してくれて、まがりなりにもアンプのどの様な特性が音作りに影響するのか分かってきた気がします・・・まだまだ、ほんの入口で入門したところに過ぎないんだけれど(笑)・・・。
それで、12BH7Aと同様な真空管で更にもう一台作って見識を深めたいと思う訳です。特性が似ている真空管で作っても面白くもなんともないので、かなり特性の違う真空管で試してみて、あぁ、これはこういう事なのかと理解が深められれば「なおよし」としたいわけです。そこで入出力の直線性が12BH7Aより優れている6FQ7を使ってステレオ・オーディオ・パワーアンプを作ってみようという訳なのです・・・さて結果は如何に???。

2.設計
まず最初に回路図を出しちゃいます・・・これ基本回路は誰がやっても同じですから・・・。



6FQ7の定格をまず頭に入れておきます。


A1級増幅器の標準動作条件を参考にして設計を進めますが、細かい所はシミュレーターを使って決めていきます。
終段、電力増幅器の数学モデルを次に示します。
プレート電圧約240V、プレート電流約1Aのプレート抵抗は特性図から約7kオームであり、出力トランスは入力インピーダンスが7kオームのものを使います。電源電圧240V、7kオーム負荷、グリッドバイアスー6V、6Vopの励振で0.33Wが出力出来るようです。なお、これ以上のドライブはグリッド電圧が正の領域に振り込まれるため歪が急激に増大します。従って設計上の最大出力電力は約0.3W強であると思われます。



これらの動作状態をプレート特性の負荷線上で見ると次のようになります。


(注)リニアリティの良いところを使ったつもりです。もう少しプレート電流を流す設定でも熱的(許容電力損失的)には持つのですが、電源トランスがこれで目一杯なのです・・・トランスをワンランク上げると形状が大きくなります・・・

続けて前段ドライバーアンプの数学モデルを次に示します。A1級増幅器で、データシートからプレート抵抗は約14kオームと想定されます。効率よく次段にエネルギーを伝送するには負荷抵抗はプレート抵抗と同等かバラツキを見込んでも数倍以下に選ぶのが良いとされているので、ここでは負荷抵抗は51kオームに選定します(次段の入力抵抗との合成抵抗は42kオーム)。
ドライバーアンプの数学モデルを次に示します。

電源電圧240V、42kオーム負荷、グリッドバイアスー6V、0.43Vopの励振で次段の入力に5.9Vopの電圧が出力出来るようです。



この設定で、増幅率は14程度となって出力に6Vopの電圧を得るのに入力に約0.4Vopの電圧が必要なことが分かります。この動作状態をプレート特性の負荷線上で見ると次のようになります。



続いてオーバーオールの特性を確認してみます。6FQ7オーディオパワーアンプ全体の数学モデルを次に示します。

0.44Vop=0.31Vrmsの入力に対してシミュレーション上負荷に約0.24Wが出力され、これがオーディオアンプの設計上の定格出力電力と思われます(定格迄は約5%の歪で定格を超えると急激に歪が10%を超えて増大します)。




全体の利得は約13dBで、周波数1kHzにおける歪は5.5%とかなり良いことが分かります。
取りあえず、基本的な設計はここまで・・・
最後に電源部の数学モデルを次に示します。

電源部の性能は次のとおりで、電源リップルは約1mVpp以下に抑えられます。


(注)真空管のモデルは Norman Koren のモデルを参考に自作したものです
(注)トランスのパラメーターは現物の実測値です
(注)シミュレーションは Cadence社の OrCAD Pspice を使用しました

実機の性能については各種特性を整理し改めて報告したいと思います。

【御参考】


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