May 24, 2020

12BH7A Audio Power Amplifier #2 (12BH7Aオーディオパワーアンプ電気性能編)

1.概要
久し振りに設計した12BH7Aステレオ・オーディオ・パワーアンプの電気性能がどのようなものか測定してみました。
測定項目は基本的なところで、
(1)入出力特性
(2)歪率(全高調波歪)
(3)周波数特性
です。残留雑音、混変調歪、ダンピングファクターについては測定器を用いての測定までは手が回らず、スピーカーを鳴らしての聴感でお茶を濁すことに・・・ま~、アマチュアのやる事ですから・・・(笑)

2.測定環境
電気性能測定の環境を次に示します。

なんちゃって自動測定・・・コンピューターによる自動測定と言いたいところですが、殆ど手動です・・・(笑)

3.入出力特性
オーディオアンプ入力に自作のDDS(オーディオ周波数シンセサイザーです)から単一周波数の正弦波を入力しオーディオアンプ出力に接続したダミーロード(4オームの疑似負荷)両端の波形を帯域200MHzのディジタルオシロスコープで読み取りFFT(高速フーリエ変換)後の高調波を含めたレベルを記録します。その結果を解りやすく纏めたのが次から示す図です。
R-チャンネル

L-チャンネル

チャンネル間のレベル差は0.2dB以下で特性はよく揃っています。1dB圧縮ポイント(1dB compression point)は入力が0.63Vrmsの時で出力が0.45Wとなって、設計時に求めた最大出力電力と一致します。

4.歪率
FFTで求めた高調波のレベルと基の波形とのレベル差から歪率を計算してグラフ化したのが次の図です。
R-チャンネル

L-チャンネル

歪率が10%になる入力レベルは0.45Vrmsでその時の出力レベルは0.25Wです。一般的にこのポイントを定格と呼んでいる様なのですが、このアンプの定格は0.45Vrms入力で0.25Wが出力できるということで、このレベル以下ならば連続して歪の少ない音が出るという事のようです。一方、最大出力の0.45Wというのは瞬間的に出せるパワーで、歪が多く連続して出力しても聴くに堪えないという事でしょう(別の言い方をすると、かなり高い周波数のインパルスが出せるパワーで、その高調波は帯域外で聴こえないので問題にならないということですね)。ちなみに歪率17%の波形とは次のような波形です・・・耳が痛くなりそう(笑)。


5.周波数特性
定格の入出力条件でアンプの周波数特性を測定した結果を次に示します。低域の遮断周波数は54Hz、高域の遮断周波数は51kHzとミニパワーのアンプとしてはそれなりの性能です。フラットな帯域は200Hzから20kHzということで、低域側にやや不満がある特性です。この原因は出力トランスの一次インダクタンスが十分大きくない為だと思われます・・・やっぱり出力トランスがキモなんですね・・・。ということで、低音をガンガン鳴らすという向きには全く向いていないことが分かります。



次回は機械性能について、そして最後に歪率改善の手法について解説したいと思います。

【御参考】
外観を次に示します。この大きさですからね~低音をガンガン出すのは無理がありますよね(笑)。やっぱり行き着くところはハイパワーなアンプなんですね(超笑)・・・パワーが出るだけじゃなくて低音もガンガン出るってことなんですね・・・


下記も参照ください。

12BH7Aオーディオパワーアンプ設計編
12BH7Aオーディオパワーアンプ機械性能編
12BH7Aオーディオパワーアンプ追補

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