Feb 1, 2015

6m QRP 真空管リニアアンプ(その3)

1.概要
Summary of "Vacuum tube linear amplifier for 6m QRP (Part 3)"
出力のπマッチ回路を再設計しました。条件を一度リセットして、終段の真空管の出力インピーダンスとマッチングを取った時にコンデンサが完全に抜けた状態にならないよう設定しなおしました。また、シミュレータを使って動作状態をチェックしてみました。
I have analyzed behavior of pi matching network by an analog circuit simulator.

2.πマッチ回路の設計定数
Design parameters of pi matching network
πマッチ回路の設計
最も簡略化した送信機終段からアンテナにかけての等価回路を次に示します。


まず、設計の前提として、
Q2≧1
Q1≦30
と制約条件を設定しておきます。もちろん、これらの制約範囲外でも解は求められるわけですが、フィルタとしては不適正または実際の実現性に疑問符が付きます。
最初に、Q2=1の場合を設計してみます。
Q2が1のとき、入出力でマッチングが取れるのは、R=25Ωで、Q1=14.1となります・・・計算式は省略します(参考文献参照)。
これらの値からL1とC1、L2とC2を計算すると次のようになります・・・計算式は省略します(参考文献参照)。

L1=1.11uH
C1=8.9pF
L2=0.08uH
C2=64pF
これらの値から、タンクコイルとして1.2uH、プレートチューン用に8.9pFのコンデンサが必要なことが解ります・・・がですよ、タンクコイルは何とかなるとして終段の真空管6AQ5の出力の浮遊容量が8.5pF、ソケットや配線の容量とかも考慮すると15pF~20pFぐらいの容量が既にC1として存在するのでこの構成は成り立たないことになります。
もともとの定数設定は、この条件を拡張?して終段側の定数をいじって無理やりマッチングを取ろうとしたものなのですが、シミュレーション解析上はうまくいっても実機では調整は無理なようです。
それではと、Q2が3の場合を設計してみます。
Q2が3のとき、入出力でマッチングが取れるのは、R=5Ωで、Q1=31.6となります・・・計算式は省略します(参考文献参照)。
これらの値からL1とC1、L2とC2を計算すると次のようになります・・・計算式は省略します(参考文献参照)。

L1=0.50uH
C1=20.1pF
L2=0.05uH
C2=191pF
これらの値から、タンクコイルとして0.55uH、プレートチューン用に20.1pFのコンデンサが必要なことが解ります・・・20pFというのは、かなり実装設計に工夫を凝らしてやっと実現できるか否かという値ですし、タンクコイルの0.55uHというのも定数としてはかなり低い値なので、安定した値を得るにはこちらも少し工夫が必要ですね。
ということで、タンクコイルが0.55uHの場合についてシミュレーションを行ってみました。
50Ω負荷における出力電力が最大になるようパラメーターを調整したあとのシミュレーション結果を次に示します。



シミュレーション結果は、ほぼ計算結果と一致し、50Ω負荷には約4.9Wが出力されます。

3.実機での検証
Experiment's results
シミュレーション結果の定数を参考にして、実機のπマッチ回路を見直し、改造を行いました。インダクタの値はかなり小さいので、安定な特性が得られるようにT68-10トロイダルに13ターンの構成としました・・・配線のインダクタンスの影響がある値なのでインダクタンス値は少なめに設定しておいた方が良いかと。


実装は、改造を重ねてきているので、ごちゃごちゃしてきました・・・これにまだ、パワーを上げていくと、干渉や異常発振が起こることが想定されますがどうなることか?
取り敢えず、やや乱暴ですが、パワーをぶち込んで動作確認してみました。


各段のバイアス状態は、まだ最適ではないのですがパワー最大になるようにπマッチ回路の調整を行いました。その結果、プレートチューンのバリコンはほぼ抜けた状態、ロード(アンテナ)チューンは半分入ったところで最大となりました。やはり真空管の出力回路の浮遊容量が大きいようです。
途中経過ですが、50Ωダミーロードの電圧波形を次に示します・・・縦軸は未校正。


測定が正しいとすれば、ダミーロードに約0.5W出力されたことになりますが・・・一方、この時マジックアイのウィンドウは完全に閉じているので、シミュレーション解析結果より推定すると2W以上出ていることになります。いずれにせよ、別途校正されたパワーメーターもしくはスペアナによって、出力電力は正確に測りたいと思います。
マジックアイの実際の動作を次に示します。


4.更なる改善
Further improvement
πマッチ回路はほぼ最適な状態になっていると思われますが、プレートチューンにもう少し余裕がほしいという場合は、タンクコイルのインダクタをもう1ターンぐらい減らして0.43uH程度にしてみるというのもありかもしれません。またこのリニアアンプの目的からは、プレートチューン用のバリコンはオープンで無調整というのもありかと思います・・・部品や実装のばらつきに対応できませんが??
さらに今回気が付いたのですが、マジックアイの表示が最大約2Wになっていました。これは、もともとの設計の趣旨から最大5Wもしくは4Wに変更し、部品を交換して再設定したいと思います。

(参考文献)
定本トロイダル・コア活用百科 「Lマッチによるインピーダンス変換」 山村英穂著 CQ出版社

【リンク】




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