2月の三連休に箱根で温泉したついでに、箱根町から山岳回折の実験をやりました。その結果について報告します。
I make a report of diffraction caused by mountain ridges on ham radio in Hakone on Feb. 10, 2013.
日時 : 2013年2月10日
運用場所(その1) : 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原ポーラ美術館脇
北緯35度15分13秒
東経139度01分22秒
海抜791m
運用場所(その2) : 神奈川県足柄下郡箱根町強羅早雲山駅前駐車場
北緯35度14分46秒
東経139度02分09秒
海抜765m
運用場所(その3) : 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原温泉旅館内
北緯35度16分03秒
東経139度01分01秒
海抜671m
(注)GPSでの計測による
使用機器 : ICOM ID-31(430MHz帯 FM 5W)
アンテナ : 付属ホイップ
Date: February 10, 2013
Operating Point #1: A road side near Pola Museum of Art in Hakone town.
35.15.13N
139.01.22E
791m above sea level
Operating Point #2: A parking lot near Sounzan station in Hakone town.
35.14.46N
139.02.09E
765m above sea level
Operating Point #3: A Hotel at a hot spring resort in Hakone town.
35.16.03N
139.01.01E
671m above sea level
Rig: ICOM ID-31 (430MHz FM 5W)
Antenna: Whip
交信出来た地点を以下に示します。
緑のマークが交信できた地点で、赤のマークは受信のみで交信に至らなかった地点を示しています。
Green marks show 2way contact points from a blue mark (Hakone town).
Red marks show points from where signals were received at a blue mark.
これらの交信のうち代表的なケースについて、山岳回折の分析をしてみました。
I analyze diffraction caused by mountain ridges about typical cases of contacts.
1)神奈川県中郡二宮町のケース
地図ソフトのカシミールを使って見通し判定をすると次のとおりです。
A case about Ninomiya town (operating point #1)
1回の回折で電波が届いており、安定な通信が出来ることがわかります。
One diffraction and stable communication.
2)神奈川県横浜市戸塚区のケース
A case about Totsuka, Yokohama city (operating point #2)
1回の回折で電波が届いており、安定な通信が出来ることがわかります。
One diffraction and stable communication.
3)神奈川県伊勢原市のケース
A case about Isehara city (operating point #2)
1回の回折で電波が届いており、安定な通信が出来ることがわかります。
One diffraction and stable communication.
4)神奈川県綾瀬市のケース
A case about Ayase city (operating point #3)
2回の回折で電波が届いており、弱いながらも通信が出来ることがわかります。
Two diffraction and communication by week signal.
5)神奈川県横浜市保土ケ谷区のケース
A case about Hodogaya, Yokohama city (operating point #3)
2回の回折で電波が届いており、弱いながらも通信が出来ることがわかります。
Two diffraction and communication by week signal.
6)神奈川県相模原市南区相模大野のケース
A case about Sagamiono, Sagamihara city (operating point #2)
3回以上の山岳回折を伴っており、電波がかなり減衰するため交信は非常に困難です。
More than three diffraction and very difficult situation because of attenuation.
7)神奈川県横須賀市のケース
A case about Yokosuka city (operating point #2)
3回以上の山岳回折を伴っており、電波がかなり減衰するため交信は非常に困難です。
More than three diffraction and very difficult situation because of attenuation.
以上のことから、箱根町の広い範囲で、特に山に登らなくても箱根の外輪山の山岳回折によって約50km程度の距離間で結構安定な通信ができることがわかりました。なお、この実験で、この程度の距離なら2回までの山岳回折でハンディー機でも通信が可能なことがわかりました・・・これ以上の距離だと2回の山岳回折では厳しいと思われますが・・・。
最後に、今回行った極めつけの通信実験について紹介します。それは、富士山反射+山岳回折による通信実験です。通信の相手局は静岡県御殿場市神山の局でアンテナは18エレメントのスタック(仰角の可変機能付き)で出力が50W(実質は35W程度とのこと・・・)です。アンテナで富士山頂付近を狙っていただきお互いの信号強度を確認しました。驚いたことに、ベストの状態で信号強度が跳ね上がり、完全に見通し外なのにRS55-57という素晴らしく安定な状態で交信できました。これを、カシミールで見てみると次のとおりです。
A great contact with a station at Kamiyama, Gotenba city...reflection by Mt. Fuji and diffraction by mountain ridges around Hakone town. Very stable communication with RS55-57.
青い線が、神山から富士山頂への電波の経路で赤い線が富士山頂から箱根町への箱根外輪山で山岳回折を伴った電波の経路です。富士山ビームがいかに効果的かというのが今回はっきり分かりました。
なお、参考に温泉旅館内のリグの設置状況と、温泉旅館からの見晴らしの様子を次に示します。
まず、設置状況・・・
My rig in the hotel...
温泉旅館から東方向・・・見えるのは明星ヶ岳
East direction from the hotel...
温泉旅館から西方向・・・富士山は右端の向こう側にあるのですが見えない
West direction from the hotel...
(参考)
山による反射は、山の表面の岩石に電波があたって散乱するために起こると考えられるので、波長が岩石の大きさと同程度から短い周波数で顕著であると考えられます。従って山岳反射はアマチュア無線の周波数帯で言うと2m(144MHz帯)からマイクロ波の周波数帯でよく起こると言えます。