Mar 24, 2014

電磁適合性治具LISN

人工衛星搭載機器の電磁適合性(EMC)試験に使用するLISNを設計・製作したのでその内容についてまとめてみました。
I have summarized the details of design and production about a LISN unit for space craft EMC.
LISN=Line Impedance Stabilization Network
EMC=Electromagnetic Compatibility

(参考)
LISNとはMIL規格でEMC試験の時に使用するよう規定されているネットワーク回路で、衛星や航空機、潜水艦、野戦基地局等のバス電源システムの出力インピーダンスを等価的に表した回路網のことです。

【仕様】
定常電圧:32Vnom
最大印加可能電圧:40Vmax
最大電流:5Amax

【回路図】
今回製作したLISNの回路を次に示します。




これは、ある衛星のバス電源の出力を等価的に表したものです。

【設計の詳細】
軍用機器、特に人工衛星搭載機器のバス電源ライン上の電磁適合性(EMC)を測定する場合に、その測定結果が衛星バス電源側のソースインピーダンスによって大きく影響されるため、これを管理する必要があります。このため、MILやJAXA殿の規格ではバス電源ラインにLISN(Line Impedance Stabilization Network)を用いるよう規定しています。多くの場合、衛星バスシステムは標準化されたものが使用されるので、LISNに使用される素子の値はある程度標準化されているのですが、個々の衛星バスシステムの固有の値が分かっていればその値を用いることにより測定結果の再現性を高いものとすることができます。


近年、インダクタ(コイル)は購入するものであって設計するものではないという風潮が強いのですが、この例にぴったし合ったインダクタなど、普通売っていないので、これを設計して作る必要があります。
設計値
インダクタンス:0.5uH
直流重畳電流:5A
のインダクターの設計を行ってみました。
直流電流5Aを充分流せる巻線が可能で小型化を考えて、容易に入手できるコア材としてMicrometal製のカーボニル鉄トロイダルコアT68-2を選定しました。
T68-2の特性(B-Hカーブ)を次に示します(-2Material黒の線)。なお、-2材は磁化力の大きさに対して透磁率の変化が少なく周波数特性も100MHzは伸びているので、この用途には最適と考えられます。


次に、T68-2のAL値から巻き数とそのインダクタンスを計算すると。
AL=5.7±5%
uH=(AL*巻き数の2乗)/1000
巻き数=√(0.5x1000)/5.7=9.4ターン
巻き数9または10ターンで約0.5uHが得られることが分かります。T68-2の磁路長は42.2mmなので、このコアに5Aの電流を10ターンで流した時の磁化力は、 H=5x10/0.042=1185AT/mであるのでエルステッドに直すと14.9Oeとなります。磁気飽和のHが500Oeなので、全く問題のないことが分かります・・・余裕ありすぎですね。

【製作したインダクタの実測値】
T68-2に1Φのウレメット線を9ターン巻いてインダクタンス値を実測しました。


#1 0.55uH
#2 0.54uH
#3 0.54uH
#4 0.55uH

コアによるばらつきはあまりなく、巻き数9ターンで0.5uHが得られるようです。

【まとめ】
実際の製品を次に示します・・・ノートパソコンのキーボード上に乗るコンパクトさ。



内部



資材費:3000円
製作工数:10H

このような測定器、必要な方・・・あまりいないと思うけど?・・・連絡いただけば、設計製造いたします・・・プロ仕様です!!
費用実費のみ・・・利益なし??・・・はい!

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