人工衛星搭載機器の電磁適合性(EMC)を調べる試験のうち電源ライントランジェント伝導干渉感度(CS06)を試験するための試験用治具(付加装置)を設計・製造したのでその内容についてまとめてみました。現在実用化されている人工衛星の標準的な電源ラインのトランジェント波形を次に示します。
I have summarized the details of design and production about a CS06 measuring unit for space craft EMC.
CS06=Transient spike conducted susceptibility on power leads
EMC=Electromagnetic Compatibility
この波形を簡易的に作る試験装置を今回設計・製造しました。簡易的というのは、定常とプラス、マイナスの3状態ではなく、定常とプラスまたは定常とマイナスの2状態を2回に分けて試験を行って図の波形を印加したのと等価な試験を行ったとするものです。
以下に、この装置の設計について記載します。
【仕様】
定常電圧:32Vnom
最大印加可能電圧:40Vmax
正のトランジェント:+3V、2ms、立上り・立下り1us、繰り返し0.5秒
負のトランジェント:-3V、2ms、立上り・立下り1us、繰り返し0.5秒
最大供給能力:5A(160W@32V)max
【ブロック図】
この装置のブロック図を次に示します。
ファンクションジェネレータなどのパルス発生器から5VのTTLレベルのパルス幅2ms繰り返し0.5秒のパルスをSIG入力に印加します。入力されたパルス信号を信号発生器(GEN)で正のトランジェントまたは負のトランジェントに対応する信号に変換し、メインのスイッチをドライブするためのドライバ(DRVR)に送ります。ドライバから位相が180度ずれたQとQバーの信号を出力し、SW HIとSW LOをドライブします。SW HIとSW LOはQ、Qバーによって交互にON/OFFし同時にONになることはありません。これらのSWの作用によって、OUT出力にトランジェント波形を生成します。なお、REGは内部の電子回路に電源を供給するための電圧安定化器です。
【設計の詳細】
実際の設計は、基本設計からさらに簡略化をはかり、SW LOはダイオードで構成しSW HIの出力に対応してON/OFFする設計としました。これにより、DRVRのQバー信号も不要となります。まず、正のパルスを出力する回路を検討するための数学モデルを次に示します。
上記回路の応答波形
負側のトランジェントを出すには各々の電源の電圧を3V下げ、パルスジェネレーターの波形を上下反転させます。
上記回路の応答波形
立上がり、立下りは素子の性能によりますが、約1us程度は抵抗負荷で実現できます。なお、負荷が容量性の場合は立上がり立下りが鈍りますが、これは性能の保証外です(容量によってフィルタリングされていると言えます)。
実際の製品を次に示します・・・ノートパソコンのキーボード上に乗るコンパクトさ。
フロントパネル
リアパネル
内部
資材費:3000円
製作工数:18H
このような測定器、必要な方・・・あまりいないと思うけど?・・・連絡いただけば、設計製造いたします・・・プロ仕様です!!
費用実費のみ・・・利益なし??・・・はい!