Jun 26, 2015

6m QRP 真空管リニアアンプ (その4)

1.概要
Summary of "Vacuum tube linear amplifier for 6m QRP (Part 4)"
設計を開始してから1年半近くたってしまいましたが、段間の同調回路、出力のπマッチ回路、異常発振防止のデカップリング、RFCについてとことん?検討しました・・・誰がやっても動作する様にチューニングしたつもりです。ただし、入出力特性のリニアリティとか出力のスプリアス特性なんかは充分評価できていません・・・そのようなことを無視すれば、そのまま使えるというレベルになったので回路図を公開します。

2.段間の同調回路
Interstage coupling within the amplifier
もともと、空芯コイルと浮遊容量で同調回路を構成するという設計だったのですが・・・本に出ている回路はほとんどがバリコンを使って同調を取る構成です・・・、いろいろやってみましたが、空芯コイルでは安定性に難点があり、最終的には市販のシールドケースに入ったコイルを使ったミュー同調回路としました。
50MHz帯で使えるコイルとしては、サトー電気で入手できるサトー電気オリジナル10mm角可変コイルというのがあるのですが、80MHz用のコイル10T80をちょっと工夫して使いました。使用例を次に示します。なお、実機において50MHzで浮遊容量と同調する値は約0.3uHで、浮遊容量が30pF強あることが分かります。



2.πマッチ回路 
Impedance matching circuit (pi matching circuit) for load                       
作り方によって、浮遊容量が違ってくるので、ケースバイケースで対応する必要があると思いますが、私の場合、プレートチューン用のコンデンサは10pFのバリコンを用いて数pFのところに最良点がありました・・・これは、一度チューニングを取ればあまりいじることはない?との考えで半固定としました。
続いて、ロード(アンテナ)チューン用のコンデンサですが300pF程度のタイトバリコンが欲しいところですが、現在では新品の入手はほとんど不可能と思われますし、大型のものしか手に入らない可能性があります。私の場合、同調範囲が狭くなりますが200pF(場合によっては150pF)のマイカコンデンサとサトー電気で入手できる100pFのタイトバリコンの組合せでこれを実現しました・・・サトー電気のタイトバリコンも在庫限りのようです。
なお、πマッチのインダクタは前回解説したとおりT68-10トロイダルにΦ1.0ウレメット線13ターン巻きの0.55uHインダクタで安定に動作しています。

3.デカップリング
Decoupling for 2 stage amplifier
扱っている電力がそんなに大きくなく、アンプゲインもほどほどに抑えているので、異常発振の起こる可能性は低いのですが、グランディングとデカップリングがいい加減だと2段増幅器なので異常発振が起こります。デカップリングの抵抗の値を振って最適値に設定しました。私の場合、デカップリングを考慮しないと、約100kHzで異常発振が起きました。最終的にはデカップリングの抵抗(回路図のR7)は2.2kΩとしました。

4.RFC
Radio Frequency Choke
50MHzで使える適切なRFCは現在入手できないと思います。これは自作するしかないのですが、素人にはちょっと難しいですね・・・コイルの巻き方によっては、浮遊容量が大きくなって、50MHz近傍に共振があったり、下手をするとコイルではなくコンデンサになってしまいます。入手性と製造のしやすさから、トロイダルコアを用いていろいろやってみましたが、ポイントは巻き数を可能な限り少なくするということに尽きるようです・・・したがって大きなインダクタンス値は得られない・・・私の場合、100uHあれば充分実用域にあると割り切って、敢えて100uHのRFCとしました。300uHも作りましたが動作不安定(異常発振)でした。本来は、インピーダンスの周波数特性を測って最適なものに仕上げるべきと思いますが、RFCの製作がメインのテーマではないので、動作に問題なければOKとしました・・・コア材と巻き数をいろいろ変えて動作するものを選びました。



5.回路図
Circuit Diagram
最新の回路図を次に示します。古いYaesuのFT-690mk2をエキサイターに使うことを想定して入力のアッテネータ―の定数を決定しました。SSB、FM、CW、(AM)すべてのモードで正常に働くことを確認しました。




6.マジックアイによる電力表示
RF power indicator by an electron ray tube
マジックアイによる電力表示を、かなりの精度で読めるように定数を調整しました。表示できる最大値が5Wとなるようにして校正しました。シミュレーターを使って校正カーブを作ってみました。



実際の動作状態の動画を次に示します。



SSBの尖頭出力電力、FM、CWの出力電力は5Wは出ています・・・これは終段6AQ5のプレートに定格以上の電圧が掛かっているためと思います(280V位掛かっていますが、今のところ問題ないようです???)
実験の様子はこんな感じです・・・あまり整理整頓されていません、もちろんQSOなんかとんでも・・・という環境です。


真空管のフィラメントの明かりが見えるように写真に撮ってみました・・・




(参考文献)
定本トロイダル・コア活用百科 山村英穂著 CQ出版社

【リンク】






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